家から歩いて15分ほどのところに新入学する小学校があった。
初めて自分のクラスを担任する先生の名前と顔を今でも鮮明に覚えている。
名前は東条先生。
女性でまぁまぁ若く優しい丁寧な先生だった。
東条先生は1年限りの担任だったと思うが、一つだけ思い出深い出来事があった。
この頃、母親が東京杉並に移り住み一緒に来た男性と再婚したため、一年生の途中で私の名前の姓が変わることになった。
その時、東条先生は私に特別な気遣いをしてくれたのを覚えている。
おそらくクラスの生徒の偏見やイジメ、噂話などを懸念してくれたのだろう。
当人の私はそんな事が起きるなど全く知るはずがなく、幸い大きな問題もなく新しい名字を受け入れて使うようになった。
《たま手箱の心感覚》
当時、私は名字が変わることの意味をよく分からなかったので、なぜ東条先生が特別な気遣いをしたのか不思議に感じたが、優しさが伝わってきて先生に対する信頼が増したことは感覚として覚えている。
また、新しい姓の読みに“ら”があり、発音が苦手で苦労した恥ずかしい覚えもある。