心灯る物語
誰にも、少し苦手なことがあります。 人前で話すことが苦手な人。 初めて会う人と目を合わせることが苦手な人。 「ありがとう」の一言が、照れくさくて言えない人。 きっと誰の心にも、小さな苦手は住んでいます。 これは、そんな一人の青年のお話です。 深…
私は普段、あまり悩まない人間です。 友達の機嫌が少し悪くても、「まあ、そんな日もある」と受け流す。 どちらの道に進むか迷っても、調べて納得したらすぐに決める。 私の人生のクローゼットは、いつも整っている。 余計な感情は長く留めず、きちんと棚に…
町のはずれに、24時間営業の、少しだけ古びたコンビニがあった。 チェーン店なのに、看板の色はあせていて、電気も他より少し暗い。 けれど夜になると、そこだけぽつんと光って、まるで小さな宇宙船みたいに見えた。 そのコンビニで、夜勤のアルバイトをして…
「タイマー3分、カップ麺お願い!」 最初はそれだけだった。 中学2年の夏。 部活のサッカーで行き詰まって、クラスのグループLINEのノリにもついていけなくて、部屋で一人、スマホを睨みつけるのが日課だった僕。 そんな僕の八つ当たりみたいな愚痴に、夜中…
深い森の奥、木漏れ日がやわらかく降り注ぐ「陽だまり」のような場所がありました。 そこには「森の番人」と呼ばれる年老いた主(あるじ)が、あちこちから運ばれてきた、元気のない苗木たちと一緒に静かに暮らしていました。 ある日のこと。 一人の旅人が、…
サイコロ神社と、神さまの“ゆらぎ” 町のはずれに、小さな「サイコロ神社」がありました。 拝殿のいちばん奥には、掌にすっぽり収まる神秘的なサイコロが一つ、ちょこんと置かれています。 それがこの神社のご神体でした。 サイコロの六つの面には、「大…
昭和男の人間関係奮闘記 〜心はウェットに、行動はドライに〜 1960年代生まれの男、山田(58歳)は、今、オフィスで途方に暮れていました。 かつて彼が生きてきた世界は、もっと泥臭くて、温かいものでした。 徹夜のあとのサウナ、居酒屋での熱い語り、肩を…
真夜中の小さなステージ 私は美咲。 結婚して5年。 夫の慎吾は、平日はまじめに働く、市役所の納税課の職員です。 毎日、市民からの厳しい苦情を受け止め、数字と格闘し、いつも疲れ果てて帰ってきます。 そんな彼の部屋のクローゼットの奥には、一台のエレ…
【紹介文】 雪の降らない南の島国。 14歳の少年・証士(あかし)は、強欲さから不思議な老人より授かった「聖なるオカリナ」を自らの手で壊し、同時に光を失ってしまいます。 絶望の闇の中で、彼が一年以上の祈りと自省を経て見出したのは、楽器を持たず、自…